全体としてのグループ・アプローチ  Group-as-a-whole Approach


 集団精神療法の黎明期においては、集団の中で個人の葛藤、無意識を扱っていくというアプローチがとられた。このアプローチを individual-within-the-group アプローチと呼ぶ。

 これに対して、グループを一つのシステムであると見なして、グループ全体に働きかけていくようなアプローチを group-as-a-whole アプローチと呼ぶ。これはイギリスの精神分析家Bionによって専門家のトレーニング・グループとして始められ、タビストック・クリニックで継承された。サザーランドらによってアメリカのメニンガー・クリニックに伝えられ、ガンザライン、ホールウィッツらによってグループ・ダイナミクスセミナーとして行われる。メンバーは約15名、90分ずつ20回のセッションが行われる。



 グループ・アズ・ア・ホールアプローチはバートランフィーによる一般システム理論の影響を受けている。

 生きたシステムは何らかの境界をもっており、システム内に何らかのエネルギーなり情報を蓄えている。境界があまりに強固であれば、システム内の情報は外界と交流することが不可能となり、システムは新しいエネルギーを取り入れることも、老廃物を排出することもできなくなり、死んでしまう。また境界があまりにも脆弱であれば、システム内にエネルギーを蓄えることが不可能になる。適度な境界を保ち、エネルギーを蓄えつつ、外界と情報をやりとりすることによって、システムは成長を続けることができる。

 ダーキンらは集団精神療法におけるセラピストの介入を、システムズ理論と結びつけ、境界を固くし、透過性を低くする介入をサミング、境界を柔らかくし、透過性を高める介入をシステミングと呼んでいる。