幻想
本能の活動によって生じる身体活動の心的表象。
内的対象
自己の中に取り入れられた外的対象の心的・情緒的イメージ。
フロイトのエディプス・コンプレックス理論は、去勢不安を中心としたあくまで男の子対象の理論であった。それに対してクラインが打ち出した早期エディプス・コンプレックス理論は、母親の生み出す力に対して赤ん坊が抱く攻撃、破壊のファンタジーを中核とする女性中心の理論である。
発達理論の特徴
古典的精神分析 クライン理論
段階 stage 態勢 position
一生を通じて存在しつづける特徴
対象関係 誕生直後は1次ナルシズムのために存在しない。 誕生直後より存在する。
自我 誕生直後は存在せず。エスから徐々に分化する。
誕生直後から活動。攻撃性を外界に投影し原始的な防衛を行う。
超自我 エディプス期に両親から内在化される。 誕生直後から乳幼児自身の攻撃性が悪い対象として外界に投影され、これが再度取り入れられて超自我となる。
1)妄想−分裂ポジション paranoid-schizoid position(0〜6ヶ月)
メラニー・クラインによって導入された発達過程。 「発達の最初期の段階である。それは部分対象との関係、自我と対象の分裂、妄想的不安によって特徴づけられる。」(Segal) クラインは最初は「妄想ポジション」と呼んでいたが、Fairbairn の用語を取り入れ、妄想ー分裂ポジションと改めた。
幼児期の自我は不安定であり、乳児は母親をよいところも悪いところも兼ね備えた全体対象とは知覚できない。また生後すぐに死の本能が働き始めているので、乳幼児は死の不安に脅かされる。そのため乳児の中に生じるネガティブな感情や攻撃性は分割排除され、否認され、外部に投影される。乳児の知覚の中では母親は乳房や手といった部分対象として知覚されているため、母親は全体対象としてではなく、乳児に満足を与えてくれるよい乳房と、攻撃性を投影された欲求不満を与える悪い乳房として分裂して知覚される。そして悪い乳房がこのような不安を引き起こしているという迫害不安が生じる。 乳児は悪い乳房を憎み、むさぼり食いたいという口唇サディズム(攻撃性)を向ける。
生の本能はよい乳房に対して愛情という形で投影され、母親から愛情を向けられることで、心の中にも取り入れられ、内的なよい対象となり、最初は結合力の弱かった自我を統合へと向かわせる。
不安があまりに強いと自我は自らを分裂させ、破壊衝動を弱めようとするが、そのために自我は解体して精神分裂病的な解体が生じてしまう。
原始的防衛
取り入れ 対象の貪欲な内在化
分裂 破壊衝動と不安を防衛するために、自我が自我自身と対象を断片化する。
投射 自分の中にある悪いものを相手の中におしこめる。
魔術的万能感的否認
理想化 乳房のよい側面が迫害する乳房への恐怖に対する保護手段として強調される。
投影同一化
2)抑鬱ポジション depressive position(7〜12ヶ月)
母親は全体対象として認知され、乳児は母親に対する愛情と怒りというアンビバレンスを体験する。愛している母親を攻撃するために、罪悪感が生じる。ファンタジーの中では乳児は愛している対象を破壊してしまっており、その罪悪感から破壊された対象を修復して償いがしたいという気持ちも自覚される。こうした体験の中で、乳児の中に現実感が育ち、自我が統合されていく。
・抑鬱的不安
自分の攻撃性が、自分にとって大切なよい対象を破壊するのではないか、あるいはすでに破壊してしまったのではないかという不安。
自我は対象と同一視しているため自分自身も危機にさらされていると感じる。
・躁的防衛 (manic defense)
抑鬱ポジションに対する防衛機制。心的現実に対する万能感に根ざした否認に基礎を置いている。征服感、支配感、軽蔑によって特徴づけられる。
羨望と嫉妬
・羨望 envy
最も原始的で基本的な情緒の一つ。二者関係。主に部分対象との関係で生じる。
乳児がお乳をくれる乳房との間で体験する。生命の源泉に攻撃を加える。
死の本能の最初の現われ。
自分自身には不安や悪いものが充満し、乳房にはあらゆるよいものの源泉があると感じるような場合に、乳児は羨望のあまり自分自身の悪い部分を乳房の中に投射し、そうすることによって乳房をダメにしたいと思う。
・嫉妬 jealousy
三者関係。全体的な対象関係を前提とする。
ファンタジー Phantasie / Phantasy
「心の中にあると想定されるものであり、本能を心の中で表すもの。どんな衝動も、本能的な欲望や反応も、必ず無意識的なファンタジーとして体験される」(Isaccs 1952)
象徴等号 symbolic equation