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日本でもこういう分野の書籍が出版されるという点では意味がある出版。しかし、内容的にはまだまだ。やっぱり諸外国の法律と対照する1章がほしい。
第2章 精神保健福祉法
日本の精神保健福祉法がライシャワー事件とか、宇都宮病院事件とかの事件による世論や外圧によって変更されてきたという部分にふれていない。
また精神保健福祉法の「移送制度」に関して
と肯定面を指摘するに留まり、「365日、24時間、どこにでも迎えに行く」をうたい文句に人権侵害を繰り返した大和川病院事件などの否定的な側面は無視されている。
この制度を設けた意味はまだ十分に認知されていないが、入院をさせるために数十万から数百万以上の費用をかけて移送会社を利用していた家族にとっては意義あるものとなったのは間違いない。
第3章 心のサポート関連職種:医療関係
国家資格のあり方については、サイコロジストの間についても意見の食い違いがあり国家資格の設置には至っていない。しかしそのような背景についてはふれずに、臨床心理会の立場だけを支持する論調には問題があると思う。
国家資格の存在しないデメリットにはふれず。民間資格の活用とはいうものの、恐らく民間資格=認定臨床心理士という前提がある。
著者は言語療法士だが、言語聴覚士との対比で医療資格も医師の「指示」を受けず、「連携」を主張する。しかし、言語聴覚士とは違い、医師も精神療法によって診療請求をするという事情の違いに対する見解がない。
また医師の「指示」ではなく「連携」をというのはよい響きだが、法律上の「指示」と「連携」の違いは「連携」が拘束力のない物であるにすぎない。単に「指示」をなくすだけでは、責任関係が不明確になるだけ。
臨床心理士会の会報の最新号では「自称カウンセラーの乱立」がなげかれているが、乱立させないためには名称独占の国家資格を作るしかない。そこらへんの問題点は議論されないまま。
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