著者としては折口信夫、編者として小さく安藤礼二とあるが、まぎれもなく安藤礼二氏の読みの書物といったほうが正確だろう。民俗学者として著名な折口だが、いくつか小説も残している。「死者の書」は死せる滋賀津皇子の復活を描いた作品、と思っていたが、雑誌掲載時の初稿では主人公は藤原家の少女であった。
あの印象的な書き出し
彼の人の眠りは、除かに目覚めていった。も初稿では第二章にあたる部分であったというだけで驚いてたが、処女作やおい作品の三角関係と「死者の書」の相似、ホモセクシュアルであった彼の愛人、僧侶の藤無染の宗教的思想、仏教とネストリウス派の合一を織り交ぜ、日ユ同祖論、天皇、空海、異端のローマ皇帝、背教者ユリアヌスとヘリオガバルス、本家エジプトの「死者の書」におけるオシリス信仰、鈴木大拙、埴谷雄高の「死霊」が意外な接点を見せる、まるで大塚英志の伝奇小説「木島日記」のようなめくるめく奇想が繰り広げられている。安藤礼二という人、ただものじゃないな。さっそく著作を予約。
初稿・死者の書 | |
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