カウンセリング・スキルを学ぶ 個人療法と家族療法の統合/平木典子

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 平木先生がIPI(統合的心理療法研究所)を設立する以前、国際基督教大学の小谷英文先生と一緒にTIPSという研究所を主催していたときに週1回のセミナーに参加していました。そのころは精神分析や集団精神療法の方に関心が向いていたのですが、今から思うともっと家族療法について平木先生から学んでおいたら良かったなあと後悔しています。この本は何だかその十数年前のセミナーの復習と、さらにその先を示している良書と思いました。平木先生のフェミニスト・カウンセリングに対する両値的な気持ちから、アサーション・トレーニングに自分のあり方の基軸を見いだしたこと、また下記のような心理臨床の世界の権威主義に対する批判には大きくうなずくところがありました。


権力、権威のある人の意見、考えについて年齢、地位の低いものが反論すべきでないという日本文化の中では、反論は不利な状況を招きかねないがゆえに抑圧され、権威者の説は聞かれたままで終わる。その伝統の下では、相互交流による思考刺激の交換もなければ、新たな理論の想像も生まれにくく、権力構造に支えられた学説が旧態依然として残り続けることになる。つまり、単に自分が知らない意見や説を知り、受け継いでいくという刺激しか得られないのである。
 あえて極端な表現をとるならば、日本の心理臨床の世界における権威は、学説の独自性や斬新さ、論者の説得力、実践上の実力によって確立されているというよりは、権力を持つ閥によって維持されていると言えるだろう。そして、その権威は、主としてフロイト、ロジャーズ、ユングの紹介者と支持者によって長い間占有され、一方で行動療法家はそこには関わりなく別の地位を確立してきたといっても過言ではあるまい。その動きは、挑戦されることの少ない男性の権威者とそれに従う弟子たちによって支えられ、いまだに大きく変わることはない。(前掲書 p.59)
カウンセリング・スキルを学ぶ―個人心理療法と家族療法の統合
4772407871平木典子

金剛出版 2003-09
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