ころんで学ぶ心理療法/遠藤裕乃

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 「逆転移」だの「境界例」だの治療上のラベリングの正しい学び方は、まず実際のクライアントの間で苦闘する → 先人の知恵に学び、ラベリングを行うことで、治療関係を整理し距離を取って眺める → そうしたラベリングや診断がせいぜい100年ほど前から唱えられ出した人工的な概念で、この先100年後に存在しているかどうかもあやしいものだという相対化を行う、という順番で進むのがよいと思います。この本は1番目のステップは十分すぎるほど書いているけど、2番目のステップはもうひとつかな。初心者が素直に読むと、感情の前に逆転移を感じるようになってしまうように思います。
 後半の逆転移の自己開示の部分に関しては素直に読めました。でも前半は何か引っかかる・・・
 やっぱり最初の事例のところかな。学校でもともと指示に従うタイプの女の子がめずらしく先輩や顧問の先生にしてみた自分の主張を認めてもらえずうつ的になって来談した事例。セラピストに指示を求めて不満をぶつけて中断するんだけど、著者はこれを「失敗」と呼ぶ。まあイニシャル・ケースとしたら無理もないところだけれど、やっぱりこれを逆転移の問題ということにしちゃうと、クライアントの感じていた怒りはどこへいっちゃうのという気がするし、学校でできなかったことがここではできたじゃないという見方をしたっていいと思う。それで筆者はこの事例をベテランセラピスト24名のところに持っていってお伺いを立てるんだけど、何だかこのアドバイスが今ひとつさえないんだよね。
 セラピストがこう感じたのは過去の外傷体験の反復なんじゃないかとか、何だか読んでげっそりしてしまう。
 逆転移分析も確かに大事だと思うけど、そのまえにクライアントの力動や治療構造について考える部分がたくさんあるんじゃないか、中身よりまず外側が大事なんじゃないか、そんなことを考えました。

ころんで学ぶ心理療法―初心者のための逆転移入門
ころんで学ぶ心理療法―初心者のための逆転移入門遠藤 裕乃

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