原本の半分強のみをセレクトした抄訳。筆者はアルメニア系のアメリカ人。グリーシャンととともに「無知の姿勢」というナラティヴ・セラピーの重要なアイディアを提出した人。グリーシャンが亡くなって、この書籍も共著ではなく単著になったらしい。
ナラティヴ・セラピーの技法のほとんどはなるほどと思うし、自分のアプローチと共通すると思うところはあるんだけれど、どこがひっかかるかというと、セラピストとクライアントの間にあった権力関係を解消すると、そこに理想の関係性が広がっているとしてしまうところ。これは、共産主義革命を行ってプロレタリアート独裁になれば真の人間らしい理想的な関係性が生まれるというのという主張と同じに見えてしまう。むしろ階層性・権力性は人間関係の中に内在しその悪影響をどうすくなくするかという見方の方が健全だと思う。
もし、かれらが「無知の姿勢」というアプローチを編み出したけれど、それは結局診断的なアプローチと結局本質的な差はないし、優劣も存在しない、ただユーザーにとって利用可能な方策は一つ増えた、と主張したらこれは断然、かっこいいと思う。けど、結局主張しているのは「無知の姿勢」が、「診断的な姿勢」より優れているということだという階層性。クライエントとセラピストがコラボレーションをするという意味で等価ならば、セラピストが何を信じているかについても同様に全肯定できるはずでじゃないのかな。
- p.209 レイク→ライク テオドール・ライク 精神分析家 「第3の耳で聞く」という比喩で有名。
会話・言語・そして可能性―コラボレイティヴとは?セラピーとは? | |
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