サイコロジカル・トラウマ/ベッセル・A・ヴァンダーコーク 編著


内容(「BOOK」データベースより)
外傷後ストレス障害(PTSD)は、おそらく他のどの精神障害よりも、心理的ならびに生理的反応の密接な相互依存性を示している。本書は、生物学的視点と精神分析学的視点の双方を統合して取りあげた画期的な著作であり、その内容は現在も臨床家や研究者に多大な影響を与えている。トラウマ治療の根幹として、トラウマ体験に焦点をあてた治療が真に効果があるのか、では PTSDの精神療法においてトラウマ体験をどのように扱うべきなのか、社会的支援のあり方とは何か、暴力の世代間伝達としての家族内トラウマ、さらに、ナチス強制収容所の生存者研究の結果が例としてあげられ、極限状況の中で生き残るための集団の役割が詳しく解説される。
内容(「MARC」データベースより)
トラウマ体験に焦点を当てた治療が真に効果があるのか、PTSDの精神療法におけるトラウマ体験の扱い方、社会的支援のあり方、さらにナチス強制収容所の生存者研究の結果等、極限状況の中で生き残るための集団の役割を詳説。

目次
第1章 衝撃的な体験がもたらす心理的影響
第2章 分離の叫びとトラウマ反応―愛着と分離の生物心理学における問題点
第3章 トラウマ反応の精神生物学―過覚醒、狭窄、トラウマへの嗜癖
第4章 虐待が子どもの思考に及ぼす影響に関する理論的発展
第5章 境界性人格障害における先行するトラウマ
第6章 家族内トラウマ―暴力の世代間伝達
第7章 トラウマ反応の始まりと解消における集団の役割
第8章 健忘、解離、抑圧されたものの回帰
第9章 「描画療法」によるトラウマ記憶の想起と統合
第10章 犠牲者から生存者へ―ストレス管理法による学習された無力感の治療

 はや20年前、1986年に刊行された広範な論文の展望を持って描く先駆的なトラウマ本。ジュディス・ハーマンも執筆。
 翻訳は担当者によるばらつきが大きい。症例を扱った9章、10章が下訳レベルなのは残念。

  • p.37 「大人と子どもの言葉のもつれ:優しさと情熱に満ちた言葉」Confusion of tongues between adults and (the) child:The language of tenderness and passion 「優しさと情熱に満ちた言葉」だったら何だかいいものみたいだけど・・・これだけたくさんの論文が挙げられていると全部目を通すのは不可能にしてもアブストラクトくらい読んでおかないととんちんかんな訳になってしまう。フェレンツィの古典的な論文。本文には定冠詞 the が落ちている。正しくは「大人と子どもの間の言語の混乱:優しさと情欲の言語」。子どもが優しさを求めているのに、大人が性愛を求めていると曲解することを指している。
  • p.59 ノルエピネフリン 「ノルエピネフリン」と呼ぶのはアメリカだけで、他の国では「ノルアドレナリン」と呼ばれる。文中で「ノルアドレナリン」と混在しているので、統一した方が親切。
  • p.118 Mahler とその同僚らによる英国の対象関係論学派の仕事 英国→アメリカ?
  • p.122,166 表記揺れ 近親相姦/近親姦
  • p.167 読み上げ課題(reading assignments) 英語が併記されているのは訳者がわからなかったということでしょう。「文献、テキストなどを読んでくる課題」のこと。
  • p.167 強い投影、防衛的分離、絶滅の不安をも含むことができる 含む=contain でしょうか。ビオンの用語を知らない人には意味不明の文になってしまいます。訳注をつけるか「持ちこたえることができる」などの訳文のくふうが必要。
  • p.191 スキマータ schemata が schema の複数形ということがわかっているか心配になる訳文。複数形で表記するにしても「スキーマタ」にすべき。普通に「スキーマ」か「シェマ」でよいでしょう。
  • p.196 彼女は顕著なカウンター恐怖傾向も示した。 彼女がボクサーで相手のふところに踏み込めないとか、バーや飲食店でカウンター席にすわるのが怖いとかいうふうに思えてしまいます。辞書を引けば counterphobic 「対抗恐怖的」と載っていますが、置き換えても意味ははっきりしない。「彼女は明らかに自分から恐れる状況に身を置く傾向があった」と訳すべき。
  • p.196 何も着けず → 付けず?
  • p.196 自己評価を外部の基準に置く傾向(ego syntonic) ego-syntonic は普通は「自我親和的」「自己中心的」。誤訳だろうと思うけど、正しい訳は原文をみないと想像がつきません。
  • p.236 Hermann → Herman

サイコロジカル・トラウマ
サイコロジカル・トラウマベッセル・A. ヴァンダーコーク Bessel A. Van der Kolk 飛鳥井 望

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