少年ドミニクの場合―ある精神分析医の面接ノート/フランソワーズ・ドルト

 残念ながら絶版。原本も手に入りにくい状況のよう。いまなら精神病というより発達障害とみなされるかもしれない14歳の少年ドミニクとの詳細な分析の記録。あまりに詳細なのでこれが絶版の影響?と勘ぐりたくもなる。ドミニクの描いた絵がたくさん納められているのも興味ぶかい。また、小此木先生による解題も興味深い。この本の刊行はハナ・シーガルの「メラニー・クライン入門」より早いのだけれど、小此木先生がロンドンでシーガルにあったときドルトの感想を求めるたときの、答えが以下の通り。


 「私たちと彼女たちは、根本的に違う。わたしたちはあくまでも子供自身の無意識的空想 unconscious fantasy を相手にするが、彼らは親が病気の原因だと考えるのじゃありません?」
 これぞクライン派というか、子供の無意識を扱うためには親を分析の妨害者と見なし接触を避けるクライン派のアプローチと、ドルトの両親に対しても教育的に関わるアプローチは好対照。
少年ドミニクの場合―ある精神分析医の面接ノート (1975年)
少年ドミニクの場合―ある精神分析医の面接ノート (1975年)小此木 啓吾 中野 久夫

平凡社 1975
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