症例マドレーヌ/ピエール・ジャネ

 psy-pub さんのお勧めで知って読んでみました。解離や多重人格症例などでも有名なフランスの精神科医ピエール・ジャネによる古典的な症例の邦訳。なにが凄いといって、決して薄い本じゃないのですが、これが原著の6分の一くらいの抄訳で、考察部分は省略されているというところ。何だか前半部分だけ投稿して乱歩賞の最終選考に残ってしまったアンチ・ミステリ「虚無への供物」的パワーを感じますね。
 現代では考えられない写真つきで、事例の内容は現代では多分少なくなっている宗教的法悦で時に緊張病的に固まってしまったり、ほとんど食事を取らなくなったりという様子が詳細に描かれています。マドレーヌはジャネを理想化していたようで、固まって誰にも動かせない時でもジャネが動かすと動かせたり、事例の公表に関しても、ジャネを信頼して身をゆだねている様にジャネの人柄がしのばれます。

症例マドレーヌ―苦悶から恍惚へ
症例マドレーヌ―苦悶から恍惚へ
ピエール・ジャネ 松本 雅彦

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