上巻のハイライトはアナ・フロイトとの訓練分析。大学を出ていないエリクソンがウィーン精神分析協会の正会員になれたのは、アナ・フロイトという後ろ盾があったことが大きい。アナもエリクソンとの分析にはなみなみならぬ思い入れがあったようで、エリクソンが妻となるジョーンとの交際を始めた際には分析を中断したほどだった。分析を行っている間にも、エリクソンが勤めてた学校の子どもやアナと水浴にいったりと、今では考えられないような公私のいりまじった分析状況があった。アナがエリクソンにだけ訓練分析を行ったことで、親友のペーター・ブロスとの間もぎくしゃくしたものとなる一方で、エリクソンはフロイトや青年期の患者を専門にしたアウグスト・アイヒホルンから分析を受けるべきではないかという思いが頭を離れなかった。エリクソンはこうした複雑な思いをアイヒホルンに手紙で打ち明けるが、アイヒホルンは「自己愛的」(精神分析的に最もダメージを与える形容詞)というレッテルをエリクソンに張り、エリクソンの傷つきはさらに深まるのだった・・・
エリクソン、アメリカ大統領のトマス・ジェファーソンについても書いているんだね。トマス・ジェファーソンとエリクソンといったら、エリクじゃなくて作家のスティーブ・エリクソン(「Xのアーチ」とか「リープ・イヤー」)だと思っていたけど、これはスティーブ・エリクソンがエリク・エリクソンを読んでいたの?それとも偶然?
精神分析的な思春期論を行ったエリクソンの友人は「ピーター・ブロス」と覚えていたけれど、よく考えればドイツ語圏の生まれだから、この本の表記のように「ペーター・ブロス」がよいかもしれない。しかしそうすると「ウィルヘルム」・ライヒは「ヴィルヘルム」、「ポール」・フェダーンは「パウル」・フェダーンにした方がよいだろう。
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