子どもの双極性障害―親と専門家のためのガイド/ディミトリ・パポロス ジャニス・パポロス

 アメリカでは今、子どもの双極性障害が社会的なトピックになり、見過ごされていた障害に光をという声と、過剰診断ではないかという反論という、AD/HD、アスペルガー障害などと同様の流れになっているようです。(下記のエントリ参照:ニューズウィークの子どもの双極性障害の記事)


子どもと双極性障害 - 裕’s Object Relational World
 
 日本でももう少しするとこういう現象が起こってくるかもしれません。中立的にとりあえずは情報を押さえておく必要があるでしょう。
 確かに双極性障害には見過ごされやすいという側面があり、神田橋條治先生も境界性人格障害と診断された人々のかなりの割合は双極性障害が内省的治療の失敗によって「境界例化」しているということを指摘しています。


 診断にまつわる問題はとりあえず置くとして、「親と専門家のためのガイド」と副題がついているとおり、かなり専門的なことまで突っ込んで書いている一方で、一般の方への情報提供という面を崩していません。600ページにも迫ろうという圧倒的な情報量(個々の薬の作用・副作用、光療法、磁気療法など先進的な試みの紹介、学校に対していかに配慮してもらうかの交渉の仕方など)を読んで思うのは、とにかく与えられる情報をすべて提供しようという姿勢です。日本でもうつ病の本などはもう腐るほどあるのですが、内容的にはほとんど同じ、うつ病の簡単な説明と、あとは実際に診療に来たときにいかに医師の側の負担を楽にするかという視点からの情報提供という気がしてしまいます。


 あと思うのはやはりアメリカの制度のゆがみですね。確かに日本よりはずっと質の高い医療が提供されているわけですが、その恩恵にあずかれる人はごく限られている。だいたい確定診断してもらうのに数十万円かかるのでは、とても受診を簡単に勧める気持になれません。

子どもの双極性障害―親と専門家のためのガイド
子どもの双極性障害―親と専門家のためのガイド十一 元三 岡田 俊

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