浦河べてるの家が当事者活動で一気にメジャーに躍り出る前、精神科のユーザー活動は、例えば精神医療系の学会で抗議活動を行うなど、もっと反権力で政治的な運動という印象がありました。著者の名前を知ったのは、その中で最も活動的だったグループのひとつである愛媛の当事者活動団体の「ごかい」のサポーターとしてでした。
この書籍はウェブサイト上での無料のセカンド・オピニオン活動をまとめたもの。これもまた賛否両論渦巻くこと必死の過激な活動ですね。最初にユーザと家族の方の手記があって、笠先生の診断に関する文章、それからセカンド・オピニオンを受ける時のポイントが書かれています。
まずは賛の方から行けば、アマゾンの書評でもすべて五つ星とユーザーからは、その過剰投薬と誤診に関する鋭い追求に対して、まさに救世主的な扱いをされているようです。ウェブサイトも現在はあまりにも多くのセカンド・オピニオン依頼があってとりあえずウェブでのセカンド・オピニオン提供は中止になっているようです。
おかしいのはいつもは向精神薬=毒、精神医療=犯罪説を唱え、サプリメントやホメオパシーの使用を進めているブログなんかも、この本は大絶賛なんですね。笠先生にしたってSSRIはやっぱり使っているわけですけど。
一方、否の方はというとやっぱり直接患者さんに合わないで誤診と決めつけることができるかという問題です。バスジャック事件の時に行われた議論ですね。
いや確かにこれはひどいのではという例も多いのです。初回から5分間診療で向精神薬だけ出続けていたりするような病院だったら確かに他院の受診を勧めたくなりますし、向精神薬の量などみたらこれはおかしいという処方は確かにあるのだろうと思います。ただ、ウェブやファックスなどの情報だけで、他の疾患と診断するのはやはり問題あるように思います。(熱意あるユーザの方は愛媛まで診察に行っているみたいですが)。また診断の内容に関しても「名前を呼びかける幻聴」「殺すという幻聴」は統合失調症ではない(本を返してしまったので正確な引用ではないのですが)とかいう記載を読むと、そこまで断言していいものかかと思ってしまうところもあります。
ドクター・ショッピングなどという医療従事者側の一方的な否定的呼称もありますが、そのような行為を行わざるをえないユーザの方々の苦労もある以上、セカンド・オピニオンをもっと成熟したものにしなければいけないのも確かだと思います。
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