パンク・ロック/ハードコア史/行川和彦
ロンドンやニューヨークの初期パンクシーンに関しては結構いろいろなことが書かれている。しかしロンドンのパンクシーンがセックスピストルズの解散と共に徐々にニューウェーブに移行する中で、セックスピストルズ的なプロモーション的反社会性の批判から、政治、暴力、ピューリタニズム復活(禁煙・禁酒・乱交禁止をスローガンにしたバンドもあったとのこと)、民族主義、さまざまな方向に迷走し、自壊していった軌跡や、音楽的に言えばスピードを速め、メタルと混交していくプロセスに関する資料は少ない。アメリカのハードコアパンクシーンに関しては下記の本が詳しいが、本書は和書にあっては貴重な資料と言えるだろう。
アメリカン・ハードコア (Garageland Jam Books) | |
横島智子 メディア総合研究所 2008-01-23 売り上げランキング : 177551 Amazonで詳しく見るby G-Tools 関連商品 AMERICAN HARDCORE SPECIAL BOX “Everything Gone Black”EDITION (初回限定生産) [DVD] パンク・ロック/ハードコア史 Damaged アメリカン・ハードコア [DVD] SYR 3 |
ハードコアに重点が置かれているため、ガレージロック、パブロック、モッズあたりからパンクへの流れは軽視されているというか、The Jam なんかはほとんど無視という感じだが、まあここらへんは著者の好みだろうから仕方のないところか。
特に面白かったのはイギリスのハードコアバンド、クラスのこと。リアルタイムで聞いていたときはどうしてこれがパンクなのかってよくわからなかったけれど、彼らの運動がヒッピーの流れを受けていたという指摘を読んでなるほどと思った。クラスがアルバム "Penis Envy" で女性ボーカルをフィーチャーしたのが斬新だったわけだが、それはヒッピーのコミューン志向の継承という点から理解できる。一方で、自分がクラッシュだのメタルがかったパンクが苦手な理由が、彼らの持つマティズモ、というかミソジニー的なホモソーシャル性が苦手だと言うことがようやく言葉になった。
Penis Envy | |
Crass Crass 1995-10-19 売り上げランキング : 112118 Amazonで詳しく見るby G-Tools |