認知行動療法を活用した大学での学生の抑うつに対する自己効力感を高める心理教育プログラムについての研究です。CDに実際の講義で使用された資料のパワーポイントが付録でついています。
第二部では各国の抑うつ防止の取り組みと、日本の先進的な学生相談の取り組みを紹介しています。日本の大学で取り上げられているのは、東北大学、名古屋大学、九州大学、金沢工業大学、広島経済大学、神戸女学院とまあ妥当なチョイスです。
心理教育プログラムを実践したいと思っていたり、組織的に拡充して行くにはどうしたらよいかと考えている学生相談関係者にはお勧めの一冊です。
大学での精神保健的な予防活動というとスクリーニング・テストによる呼び出し面接か、心理教育プログラムということになっていますが、ぼくはやらないことにしています。
スクリーニングをしないのは、やっぱり呼び出されるという受け身の形からはじまる心理面接がむずかしいためで、そのかわりに新入生の携帯にほぼ強制的に相談用の電話とメールアドレスを入力させるという広報活動で補うようにしています。
心理教育プログラムをしないのは、アニメやロックの講義を好き放題やりたいため・・・もありますが、特に理系学生が多いキャンパスでもあり、心理的な事柄に興味がない人と接触する機会を持ちたいからです。この本に載っているような心理教育プログラムの参加の人数はやはり50人前後。内容的にこのくらいが限度でしょう。それよりも200人近くの、必ずしも心理的な問題に興味がない学生に接する方が費用対効果も高いと考えるわけです。
まあこれはほとんどカウンセラー一人職場(正確には週90分の非常勤カウンセラーもいますが)という体制のためもあります。複数カウンセラーがいたら心理教育プログラムをとりいれてもいいかもしれません。ただ、どちらかというとそういうことはアメリカのように講義以外の枠でやりたいかなとは思いますが。
大学生における精神的不適応予防に関する研究 | |
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