感情表現が悪いわけではない

 心理学的デブリーフィングとは、日本トラウマティック・ストレス学会によれば、

 デブリーフィングdebriefingとは、元来は軍隊用語で、前線からの帰還兵にその任務や戦況について質問し報告させることを指していた。それが、災害や精神的にショックとなる出来事を経験した人々のために行われる危機介入手段として転用されたのが心理的デブリーフィングpsychological debriefing(PD)である。


 近年では、トラウマ体験の対応として心理的デブリーフィングの介入としての効力のなさ、悪影響が強調されている。
 ただ個人的な考えをいえば感情の表現自体が悪いわけではない。外傷体験は、体験の有無を巡って人々を分断する働きがある。誰かを失った人/失わない人、家を失った人/失わない人、地震を体験した人/しない人、などなど。そのように分断された人々が孤立化し、外界への怒りと自責にとらわれるときに外傷体験はその悪影響を最大にする。
 有害なデブリーフィングとは、体験を持たない人々が、持った人々に感情表現を誘導するという点で、この分断を大きくするのではないかと思う。必要なのは、この分断を埋めるつながり、共有できるものの探索と言うことになるだろうか。