「ダウン症療育のパイオニア―ジョン・ラングドン・ダウンの生涯/オコナー・ワード」

 かつては変質・退化という概念の元に「蒙古型知的障害」と呼ばれていた遺伝子異常から生じる障害は、その差別的ニュアンスから発見者ジョン・ラングドン・ダウンの名を取って「ダウン症」と呼ばれている。またダウンは知的には低いにもかかわらずカレンダーの曜日あてや計算能力、音楽能力など限られた分野に特殊な才能を発揮する人々に対する呼称、「idiot savant」を提唱した人手ある。現在はやはりその差別的なニュアンスから「サヴァン症候群」と呼ばれることが多い。
 本書はそのダウン博士の生涯を記した伝記だ。そもそも日本語版ウィキペディアの「ダウン症候群」の項目にダウン博士のことが、「眼科医」と記されていたので、なぜ眼科医が発達障害に関わることになったのかに興味を引かれたのが、本書を読むきっかけだった。読んでみると内科、産科などを学んだ後に知的障害者の施設で働いている。眼科というのはどうやら間違いらしい。たぶん同時代のイギリス人ということで、ホームズの助手のワトソンとでも間違えたのではないだろうか・・・
 そんなにおもしろいというものでもないが、船の模型製作に才能を発揮したサヴァン症候群の最初の症例(James Henry Pullen)が写真で紹介されているとか、精神科非拘束運動のジョン・コノリーとの交友とかが読みどころだろうか。ダウン博士の孫がダウン症だったというのも、偶然にしてはできすぎている感じだ。
ダウン症療育のパイオニア―ジョン・ラングドン・ダウンの生涯
オコナー ワード O Conor Ward

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