「ヨハネスブルクの天使たち」/「ノックス・マシン」/「デフレ化するセックス」/「水木少年とのんのんばあの地獄めぐり」

ヨハネスブルクの天使たち/宮内悠介

 「盤上の夜」に続く第二短篇集で前作に引き続いて直木賞候補。すぐに連想するのはディック、ただやっぱりちがうのは、ディックの世界観が基本的には冷戦構造に基づいていたって言うこと。それはディストピアではあっても、21世紀を生きるぼくたちにはどこか古めかしいものに感じられてしまう。宮内悠介がこの短篇集で描いている近未来は、アフガン、イラクといったゲリラ戦、内戦の悪夢のエスカレートした反復の世界。そこにロボットDX9と少年、少女、そして戦士たちが絡んでいく。
 次作が待たれる。
 関係ないけど、「盤上の夜」はやっぱり HunterXHunter の影響受けてるんだろうか。

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ノックス・マシン/法月綸太郎

 SF3編、メタミステリ1編をおさめた短篇集。ただしSFでもテーマはもちろんすべてミステリ。ミステリマニアなら思わずほくそ笑んじゃうんでしょうね。海外ミステリはそんなに詳しくないので、わからないところもありましたが。「論理蒸発」の双子とニュートリノのメタファーが面白かったです。

ノックス・マシン
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デフレ化するセックス/中村淳彦

 女性が借金や貧困で追いつめられたとき、ある意味最後のセーフティネットとして売春や風俗で働くということがあったわけだけれど、日本の貧困化によってそういうことも成立しにくくなっている現状。最初の、慶応卒、一流企業に勤めつつ売春しているという女性のインタビューはちょっと衝撃だった。東京の大学で学ぶための学費をまかなうにはもう風俗で働くしかない女子学生が増えている・・・。
 アダルトビデオや風俗で大金を稼いでいるのは、もはやひとにぎりの家柄も学歴もある女性たちばかり、メンタルヘルスに問題があればすぐに解雇されてしまう・・・。お金のために働かざるをえないというのはそれはそれで問題だけれど、何だか事態はより病んだ方向へ向かっているようだ・・・。

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2013年09月20日のつぶやき