集団の経験―ビオンの精神分析的集団論

 3冊目の和訳が最近亡くなられたハフシ先生の監訳で発刊。
 アマゾンのレビューで酷評されていたのでちらっと原文と参照してみてみた。あとがきでは平易な文章に意訳することを避けたとあるけれど、原語に忠実にしようとしたあまりのわかりにくさというよりは、基本的な文法や語学力の不足からくるものだと思う。


p.20 なかには、無断で欠席してしまうメンバーを、ドクロマークで表すといったものもあった。

→うまい思いつきによって、無断で欠席せざるをえないと感じているメンバーのために海賊旗が用意された。


p.49 その寄与のいくつかは、個人がはっきりとその意志をもって寄与したものであるが、なかには匿名でしたいと望む人もいる。

→ others が other contributions なのに other people と間違えて誤訳。「その寄与のなかには、個人が準備してまごうことなくその人からなされたものもあれれば、個人が匿名のうちに行いたいと思うものもある」


p.53 そして、グループで匿名に満たされたいという希望は、結果的に叶えられることはなく、メンバーには欲求不満が生じるようになると、私は推測している。

→訳文はまったく意味不明。「グループの中での匿名のうちに個人が満たしたいと願う衝動を表現することと、表現することで個人の中に生じた欲求不満によってほとんどの怒りは生じている。」


p.54 ここで、私は「グループ文化」(Group Culture) という用語を用いることにする。

→私は「グループの文化」(culture of the group)という言葉をかなりゆるい意味で使っている。



集団の経験―ビオンの精神分析的集団論
集団の経験―ビオンの精神分析的集団論ウィルフレッド・ビオン ハフシ・メッド

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