* 自己愛という対象関係
コフートの独創的なところは、自己愛を自己対象(selfobject)との関係であるとしたところだろう。フロイト的な自己愛っていうのは対象に向かうべきリビドーが自分に向いてしまうというモナド的自閉というイメージがあるけど、自己愛が対象との関係に拡張されたことで、健康な自己愛という新たな視野が精神分析に加わった。
* バッド・マザー理論
コフートは病理の原因として非共感的な自己対象、つまり母親のあり方 being を重視している。だから治療においても、治療者のあり方が問われるんだけど、optimal frustration によって欠損が修復されるという理論だから、治療者が非共感的になってしまうことが治療上の前提とされている。これは患者さんによって動かされる治療者の感情(逆転移)が、見方さえ変えれば治療につながるというのと似ている。これは大きな治療上のアイディアだと思う。