奥村氏の文章について


国家資格化に向けてのさまざまな動きが聞こえてくる中、敢えて不確実な情報を追うことを控え、心理専門職として国家資格化されるためにわれわれが取り組む必要のあることについて考えてきました。
 臨床心理士会の基本的なスタンスがこうだから、臨床心理士会の情報だけでは国家資格化に関してどのような動きが行われているかが分からなくなってしまうわけだ。全心協からの情報があったので、新聞掲載前に国家資格化の動きについて知ることができたわけだけれど、臨床心理士会の情報は数ヶ月遅れで会報に掲載され、しかも医療領域の資格反対という意見が前面に出るためにローデータが何かが非常にわかりづらい。


その過程では、日本精神科病院協会より全国の精神科病院長あてに、雇用する臨床心理技術者を全心協に入会させるようにという通達が2度にわたって送付されるといったこともありました。その結果、全心協の会員は約300名から約560名へと増加した模様ですが、多くの当会会員はそれぞれの立場において対応されていたようです。当会ではこのような動きに対して、医療保健領域委員会の活動として会員へのアンケートがなされ、さまざまに展開した各県の事情が把握されました。個人の職を脅かすこのようなアンフェアな圧力が行使されるところまで、国家資格問題は煮詰まっている状況にあるということを、執行部も重く受け止めてきております。
 日本精神科病院協会の依頼がどのようなものかはまだ確認していないのだけれど、それほど強制力のあるものなのだろうか?アンフェアというならばもう少し具体的な指摘がなければそれこそ「アンフェア」ではないか。むしろ全心協の会員の増加は前述のような日本臨床心理士会の国家資格に関する情報提供体制への不満が大きいように思える。


昨年12月初旬には、日本学術会議で心理学関連の分野でシンポジウムなどを企画する担当の方が、全心協を中心に、心身医学会、日本心理学会、健康心理学会などの重鎮の方々をシンポジストとする「国家資格の有用性」といったテーマのシンポジウムが開かれました。ここには自民党衆議院議員鴨下一郎氏(厚生労働委員会委員長)も参加されていました。出席者からの情報によれば、議員立法のまとめ役である鴨下議員は、この資格について「医師法17条(:医師でない者は医業を行ってはならない)」の範囲での資格化となる、という意味のことを述べられています。しかし、日本心理学会理事長は、カリキュラムは心理学資格として日本心理学会と全心協とで作る方向を考えておられる様子で、医師法17条に縛られる診療補助職の養成について、非現実的な認識のままに事を進めておられると思われます。
 最後の文章はよく意味がわからないんだけれど、国家資格になるにしろ、素案はどこかの学会なり団体なりが提出することになる。前回の厚生労働省の研究班でもカリキュラムの素案づくりが検討され、いったんは日本臨床心理士会の河合会長もカリキュラム作成を引き受けられたのではなかったのか?「非現実的な認識」とは何をさしているのだろうか?


また教育カリキュラムについては、臨床心理技術者(医療心理士)としての専門性と独自性を発揮できてなお医療、医学の基礎的知識の必要性をどうカリキュラムに反映させるかを重要な課題として日本心理学会の東委員と日本臨床心理士会の河合委員が具体的な医療心理士養成のための教育カリキュラムを次回班会議までに検討してくることとなりました。
(平成13年度厚生科学研究「臨床心理技術者の資格のあり方に関する研究」
第1回研究班報告 全心協会長 宮脇氏によるまとめより)