巨船ベラス・トレラス/筒井康隆

 終幕近く、オィディプス王に扮した登場人物の一人が、自分の名前がフロイトによって無意識的な近親姦願望として命名されていることを嘆く。以下、アンチゴネー(に扮した人物)の言葉


 少なくとも戯曲を読み古典劇を見たものには父上の危惧なさるような誤解はあり得ますまい。神託による本来のどうしようもない運命を重層的な謎解きの技法によって表現したことこそが、かの戯曲の本質的な価値なのです。
 これは本当にその通り。オィディプス・コンプレックスが実在するからこそ、このような劇が人の心を引きつけるのだなんて言う人は、一度劇を見たらよい。
巨船ベラス・レトラス
巨船ベラス・レトラス筒井 康隆

文藝春秋 2007-03
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