サルトル『むかつき』 ニートという冒険/合田正人
『むかつき』というとぴんと来ないけれど、これは今まで「嘔吐」と呼ばれていたサルトルの小説のこと。La nausee っていうのは「吐き気」であって「嘔吐」じゃないから、本当はこっちの訳の方が原語に近い。こういうのは結構、古典作品には多くて、通称で広まってしまうとあとから正しい訳で訳しづらくなってしまう。幸い、最近は文学を読む人が少なくなって、だいぶ新訳で変更されつつある。カフカの「審判」が「訴訟」に。このシリーズでもカミュの「異邦人」が「よそもの」に題名変更されている。
この本は前半に『むかつき』の抄訳。後半はその読解。精神病理学や精神分析、ラカン理論なども結構引かれている。
シュバイツァーとサルトルが親戚だったこと、九鬼周造のフランス語の家庭教師がサルトルだったとか知らなかったな。
- p.76 オットー・ランクという精神医学者 ランクは非医師分析家なので精神医学者という表現は微妙なところ。「精神分析家」が無難。
サルトル『むかつき』ニートという冒険 | |
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