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いきなりハエの見た精神分析の光景というシュールな始まり方。でも体験に焦点をあてるあたりが何とも英国的かな。本気で入門と思って読むには各国の精神分析の状況とか、ポパーやグリュンバウムの精神分析批判とその反論などかなりマニアックな内容。
p.32 フロイトの言い間違いの話で、”We should always demand the best in bread.”(私達は常に、パンにおいては最高を求めなければなりません)を、"We should always demand the breast in bed." (私達は常に、ベッドにおいては乳房を求めなければなりません)といってしまうのがあります。翻訳では注で和訳を避けているので、さっそくトライ。
「いっぱい」は原文にはないけど、まあなかなかのでき?でも言い間違えそうにないし、言ったとしてもそう恥ずかしくないので再考。
私達にはいつでも、性交のパンがオッパイ必要です。(最高のパンをいっぱい)
うーん、これはいっちゃったらかなり恥ずかしい。しかし、考えていると頭の中がオッパイでイッパイです・・・
私達にはいつでもパンは、最高にイやらしいのがオっぱい、いるのです。(「オいしいのがイっぱい」の不完全ながら頭音交代形<スプーナリズム>)
精神分析の訓練プログラムが同性愛者を差別しないという話のたとえで、フロイト英訳者であるジェイムズ・ストレイチーが経済学者のケインズと「至上の恋愛」を経験していたって書いてありました・・・ふーん、しらなんだ。
固有名詞表記 「エリザベス・フォン・R」はやっぱ、「エリザベート・フォン・R」でないと気分が出ない。Glover が「グラバー」でめでたい。でも Davids が「ディヴィズ」なので不釣り合い。Szasz は残念ながら「サーズ」→「サース」,Joan Riviere も「ジョアン」→「ジョーン」。「シャーンドル・フェレンツィ Sandor Ferenczi」は凄く正しい表記だけど、同じ Sandor Rado が「シャンドア・ラド」なのは残念。ふたりともハンガリー系。なるほどこの本では Allan Shore は「アラン・ショー」と表記されていますね。
- p.94 フェルディナン・ド・ソシュール → レイモン・ド・ソシュール 原作には年号等誤りが多く、訳者も訂正しているが、これも原文が誤り。精神分析家の話をしているので、ここでは著名な言語学者フェルディナン・ド・ソシュールの息子で分析家のレイモン・ド・ソシュールのこと。
- p.106 チリ出身のイグナシオ・マテーブランコとオットー・カーンバーグ → この"from"は「出身の」ではなくて「からは」と訳さないとまずい。なぜならカーンバーグの出身はオーストリアだから。同様に逆転移で有名なラッカーの出身もアルゼンチンではなくポーランド。マテ−ブランコの出身はチリで正しい。
- p.205 強烈ではない形で non-intensively → 集中的ではなく intensive psychotherapy とは週に3,4回などのセラピーのことをさす
- p.254 Ferenczci → Ferenczi
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この本で知りましたが、バリントの弟子のハロルド・スチュアート2年前に亡くなってたのですね・・・
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