さまざまな場におけるコミュニティを生かした臨床的関わりをまとめた窪田由紀先生の博士論文の書籍化です。
大学キャンパスでの事例もふたつほど載っていたので興味深く読みました。
感想としてはちょっとキャンパスで抱えすぎではないかと思いました。ひとつは統合失調症の学生の事例で、親元を離れて単身生活を友人の学生たちが疑似家族的に支えるのだけど、サポートがうまくいったり、時に過干渉になったりの繰り返しというもの。もうひとつはDVというかほとんどマインド・コントロールのような人権侵害を受けた学生の事例で、暴力行為を受けているという情報があったのだけれど、基本的には問題化するまで保護者に連絡はせずキャンパスでの対応で様子を見ていたというもの。プライバシー保護という観点からかけないこともあるのでしょうが、基本的に学生を保護するのは親、相談機関や友人が一時的に保護の役割をとっても早急に役割を受け渡すというのがぼくのポリシーです。どちらの場合もきっと親をどのように巻き込むかという視点でサポート体制を構築すると思います。
週1回50分なんていうセラピストの個人的な事情に学生さんがあわせないですむというのが、コミュニティアプローチのいいとこじゃないのかなと思います。病態の重い方であれば、オンデマンドだけど、ほんとうに苦しいときに来てくれるような関係の構築を目指しています。
学生の抱える障害が人格障害や重篤な精神障害といったものの場合、彼らの大学生活を成り立たせるためには、学生本人の個人療法的アプローチのみでは不十分であり、生活面にわたる周囲の人々の理解と援助を得ることが欠かせない。しばしば言われるように、週1回50分の面接以外の6日と23時間あまりにかかわる人々の果たす役割が大きい。(p.41)
臨床実践としてのコミュニティ・アプローチ | |
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