「ルワンダ ジェノサイドから生まれて/ジョナサン・ドーゴヴニク」

 佐々木中さんの書いた文章からこの本を知った。1994年に発生したフツ族による少数派ツチ族と穏健派フツ族の80万人を越える大虐殺。殺害されはしなかったものの親族を目の前で殺害され、性的暴行を受け妊娠し母親となった女性たち。母親と母を暴行したフツ族を父に持つ子どもの写真。
 母親たちの中にはそのような過酷な歴史にも係わらず生まれてきた子どもに愛情と救いを感じるものもいれば、率直に子どもを愛せない気持ちを語るものもいる。母親たちの多くは暴行の結果としてHIVに感染している。
 この本をたまたま読んでいるときに浜松医科大のセミナーで、ルワンダにおける加害者と被害者のリコンシレーション・プログラムの存在を知った。虐殺時の加害者と被害者の家族が同じ村に住むルワンダで、「和解」という言葉はあまりに軽い。ただ従来の和解プログラムはキリスト教がベースにあり、「許し」に重点が置かれていたそうだ。「許し」よりはまだ仏教的な「受容」の方が可能性があるかと思う。暴行を受けた母親が子どもを産んだのは、カソリックの教えに基づくところが大きいのだから、教会ももっと被害者の支援に力をいれてほしいと思うのだが。

ルワンダ ジェノサイドから生まれて
ルワンダ ジェノサイドから生まれてジョナサン ドーゴヴニク 竹内 万里子

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