佐々木中さんがアナクレタでこの本の著者の坂口さんと対談していたので、何となく惹かれて読んでみましたが結論から言うと凄く面白かったですね。
対談を読むのが苦手なせいか、「0円ハウス」ってワーキングプアの人々援助のNPOか何かと思い込んで読み始めたら、ホームレス(いや家があるんだからホームレスじゃないよね)の人が河岸ぞいにつくった可動式の家のことでした(月一回くらい役所のチェックがはいるので撤収できないと行けない)。最初の3章くらいは路上生活者の鈴木さんのまるで都会のロビンソン・クルーソーみたいなサヴァイヴァル術、人間関係を基軸にしたアルミ缶の回収法、電気の利用の仕方、家のつくりかたの工夫なんかが面白いんですが、後半の坂口さんのこれまでのあゆみがまた魅力的です。小さい頃に学習机で作った「テント」生活。子どもの頃つくったアナログ・ロールプレイングゲーム、マンガ作成、そして石山修武の建築を見て惹かれ、彼が教授として勤めている早稲田大学一本に受験校をしぼったのはいいけど学力が追いつかない・・・そこになぜか舞い込んでくる早稲田推薦の話。いや、映画じゃないだろとつっこみたくなる展開。
大学はいってからも、全然新しい建物を設計する気になれず、なぜか壊れた給水塔に住んでみてそれをレポートに書き、そしてついに0円ハウスにたどりついて、多摩川、隅田川水域の0円ハウスを尋ねて回る。そして、調査した0円ハウスをカタログにして豪華製本したものを卒論に。
いや、この道の迷い具合が最高ですね。道に迷ってもちろん不安になるときもあるけれど、新しい風景が広がっていると思わず楽しくなる。読書にしても同じで、本に載っている本を読み継いでいるといつの間にか思いもかけないところに辿り着くのが楽しいのです。
まったく偶然ですけど、ちょうど映画が公開されているみたいなので見てみたいですね。
堤幸彦監督が建築家・坂口恭平の『0円ハウス』をモノクロ映画化、主人公は路上生活者 -movieニュース:CINRA.NET
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