「ニッポン春画百科」

ニッポン春画百科 上・下/オフェル・シャガン

 イスラエル人である筆者が収集した春画コレクション。上下二巻本で、正直春画にこれほどのバリエーションがあると言うことにびっくりした。馬鹿な日本人は明治期に何万枚と春画を焼き払ったけれど、一方で見る目のある外国人がこれほどのコレクションをしていてくれたことには感謝しないといけない、というか情けない。江戸の奇想画家の再評価とまったく同じ構造じゃないですか。
 筆者の解説は日本文化への誤解のようなものも多いけれど、春画への愛が伝わってくるからまあいいでしょう。ただ編集の問題で文章の中での出現部分と絵のページが離れているのがかなり読みにくくて、ここは編集にもう少し頑張って欲しかったかな。
 最後に現代の萌絵まで載っていたのはちょっとびっくりしたけど、まあ妥当。「触手」「ケモノ」「寝取られ」「BL」「百合」「ふたなり」「女装男子」等多くの現代の成年コミックのテーマが春画の再発見なんだから、あらためて日本人の変態DNA凄いねと思う。
 また幕末期の春画には外国人ものというジャンルが存在したとのことだけれど、外国人男性−日本人女性という組合せはあっても、日本人男性−外国人女性という組合せはみられないということ。単純に来日した女性の外国人が少なかったと言うだけでは説明できない日本人的な心性が影響しているものと思われるけれど、ここらへんの学術的考察があれば読んでみたい。また北山修先生の共同注視ではないけど、春画のメタファー、デフォルメ表現もかなり面白い。ラカンの好きな女性の局部を描いた「世界の起源」なんて、これにくらべるとただ趣味の悪い絵という気がしてしまう。

ニッポン春画百科 上巻
ニッポン春画百科 上巻オフェル・シャガン

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10月19日のつぶやき

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