「たまもの」

たまもの/神蔵美子

 私小説の流れを受け継いだ私写真なんだね。いきなり泣いている著者のセルフポートレートの表紙で始まり、路上でのいざこざで重症を負って生死の淵をさまよう文筆家で夫の坪内祐三の入院中の写真。しかし、このとき神蔵は別の男と暮らしていた・・・。既婚者だった神蔵は文筆家の坪内祐三と出会い、彼には結婚式間近の婚約者がいたけれど破談となって著者と結婚。その前に現れたのが白夜書房の設立者である末井昭、まるで映画「ジュールとジム」みたいな奇妙な三角関係が始まった。だけど、これは映画じゃなくて現実の世界。神蔵と末井がむつみあう姿はどうやって撮影されたのだろう。いや、映画じゃあるまいしそんな自分を演じるようなふるまいってできるのだろうか、っていうのが素朴な疑問。
 アラーキー鈴木いづみの娘さんと末井昭と著者がバーで飲む場面があってちょっとはっとする。荒木陽子さんの文章も読んでみたくなる。

たまもの
たまもの神蔵 美子

筑摩書房 2002-04
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2012年12月23日のつぶやき