本よみうり堂&精神分析を学ぶと死ぬ

 読売新聞の本よみうり堂の今年の三冊。あんまり食指の動くものなし。ジュリアン・バーンズでも久々に読むか。何だか文章が Twitter に最適化されていくような気が・・・。そういえば小谷野敦氏の近著3冊くらいフォローしていないな。


 久野先生の仮説、「精神分析を学ぶと死ぬ」に対して id:hotsuma さんがコメント。「精神医学を学ぶと死ぬ」も同様に主張できそう。ただ「精神科医は自殺率が高い」っていう俗説の実証的なデータがでるかどうか。ついでに「精神科を受診すると死ぬ」も同様。まっとうな療法なら "suicide" という言葉と一緒に検索をかければ患者の自殺例は挙げられる。"behavior therapy suicide" でも同様。しかし、久野先生のブログの記載の自殺例は確かに多い。しかし、自分のまわりで分析を受けている人が次々自殺なんて事実はないし、むしろ世代の自殺率の高さの方が多くを説明するのではという印象も受ける。確証はないが。
 久野仮説正しければ受けると必ず死ぬ呪いの療法ってホラーになりそう。何せ被害者は第二次大戦敗戦国の指導者級だというので何百万人のオーダー、日本の自殺者の40〜50年分だというのだからタミフルどころの話しじゃないわけで。因果関係の証明は難しいにしろ、それほど高率に自殺が発生するなら標準型精神分析療法での診療報酬も認められれてるのだから、厚生労働省に働きかけて何らかの行政処置を引き出せそうなもの。
 しかし、フロイトの弟子で自殺した人って、タウスク、フェダーン、シュテーケルとあと誰?分析を受けているという意味ではブルーノ・ベッテルハイムもそうか。ウィキみたら患者への問題行動がいろいろあったと記載されていた。これは初耳。


http://ykuno.jugem.jp/?eid=542
http://d.hatena.ne.jp/hotsuma/20071223/p1
行動療法家の自殺企図 http://echo.forensicpanel.com/1997/8/1/historypill.html
 とはいえやっぱり精神分析家より精神的な健康度は高い気がする。
メンタルヘルス専門職の自殺http://psychologytoday.com/articles/index.php?term=19970701-000045&page=3
 やっぱり分析関係では上記四人くらいしかあがってないな。道徳性発達理論のローレンス・コールバーグも自殺してたとは知らなかった。


 しかし久野先生、もし本当にクライアントをひとりも自殺させない臨床家たる自負があるのならやはり問題はパブリシティの問題かと。他学派の攻撃してないで、もっと早くに代理店かなんかとタイアップして制約のある大学を離れ開業してたらきっと河合・小此木両先生を越えるビッグネームになったのに・・・。惜しいことを・・・。


 今頃 id:hotsuma さんのハンドルネーム偽史「秀真伝」(ホツマツタヱ)由来と気づいた。うかつすぎ。
 しかし★100★って何ごと?


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 著者は筑波大准教授で精神科産業医。企業におけるうつ病などメンタルヘルス対策を産業医の立場から一般向けに解説。

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 と学会ネタかと思うようなちょっとこじつけと思うところも多かった。人物画の左の手が小さいのを左片麻痺と結びつけてるけど(p.22)、向かって左だったら右片麻痺じゃないのか。5番目の花が悪魔の仮面をつけている(p.22)とあるのだけど、印刷の加減なのかちっとも悪魔の仮面に見えない。これは絵を描いた女の子が5歳の時ということを表しているそうだ。右からは三番目だから3歳でもいいんだろうね。きっと。太陽から光線がでているよくある子どもの表現も「少々妙な表現がなされており、8本の光線が出ている」となる。こういう見方をするのは筆者の「諸処の対象に注目し、複数描かれているなら数える」という方針が背後にあるわけ。
 というようにツッコミをいれつつ読んでいたが、本文編と図版編が別れていて、図版も順番でなく前後に飛ぶため図を参照しようとすると非常にめんどくさい思いをしなければならず、途中から流し読みになってしまった。まあコストの関係でしょうがないのだろうけど、もう少し読みやすくならなかったものか。

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