心理職のアイデンティティと疎外

 つなでさんが心理職が「治療」などの医学用語を使うことの問題点を指摘されています。心理職のアイデンティティ形成のためにはわかりやすい方策なのですが、現実に運用されるといろいろな問題点が生じてきます。
 僕が「心理臨床学研究」に投稿したときのことですが、「治療者」は医学用語だから不適と改善意見を求められました。それで「セラピスト」に修正したらなぜかOK。「精神療法」と書いたけれど修正要求に応じなかったために、その用語がはいるたびに「心理療法」と注意書きをされた論文もありました。ほとんど嫌がらせ、というか「ストライク」を「よし」といいかえろという世界です。
 少なくとも病院を訪れている患者さんで、カウンセリングを治療の一貫と思っていない人がどれくらいいるのだろうと思ってしまいます。PTなどのリハビリテーションも含め、病院で受けるサービスの総体を広い意味で治療の一貫と考えているんじゃないでしょうか。
 アメリカでは Psychotherapy を医師も、心理も、ソーシャルワーカーも行っているわけですが、日本ではなぜか医師は「精神療法」と心理は「心理療法」と訳し分けられている。何だか最近「心理療法」という言葉が、心理による囲い込みを連想させて使いづらい気がします。僕にとって集団精神療法学会が居心地がよいのは、看護師もOTもPSWも心理も医師も Psychotherapy という同じ土俵で関われるからということがあります。