「臨床心理学」という近代/大森与利子

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臨床心理学という近代知を読み直す!

近代を批判的に透視したフロイトマルクスラカンアルチュセールらの理論や 社会学の知見にも依拠し、「共生・共存」に根差した「節度の臨床心理学」復活への道筋を探究。

市場競争原理に取り込まれ拡大化しつつある、臨床心理学という近代知。 今日の臨床心理学は、個人還元論が優勢で、社会・状況還元論は退潮傾向にある。そのアンバランスな構図に不健全な時代状況が映し出されている。 はたして、この近代知は個に優しい知なのか。共同性感覚を育む知となり得るのか。

〜目次〜
Ⅰ部
第一章 「臨床心理学」の問題系
1「臨床心理学」という突出現象
 今、なぜ「臨床心理学」なのか/突出現象の裏側
ポピュリズムと心理学
 ポピュリスト・ナショナリズム/心理学知見と市場主義経
3「心いじり」に群がる人々
 学校や家庭を覆う心理学熱/「心の教育」と臨床心理学/不安緩和剤としての「心いじり」
4もうひとつの「逆転移」〜臨床家の「シニフィアン」と「シニフィエ」〜
 臨床家とは?/指導者の言説/脱・主流言説の周辺/もうひとつの「逆転移
5「臨床心理学」というイデオロギー〜人間観を追う〜
 心理学成立の経緯/臨床心理学の今日像/セラピー・そのイデオロギー/「病者」=当事者の眼差し
第二章 市場競争原理主義と「心理学」の台頭
1個体還元論(こころ主義)の蔓延
 「こころ」が言挙げされる時代/「こころ主義」の陥穽/
2消費社会における個人化の進展と「心理学」の役割
 消費財としての家族/グローバル経済の中の個人/個人化の進展と専門家依存
3自己責任論と自助努力論
 心理学言説の群れ/教育場面と心理学的ロジック/地域社会と心理学的ロジック/企業社会と心理学的ロジック
Ⅱ部
第三章 「臨床心理学」という近代
1「臨床心理学」のアポリア
 わが国における歴史的展開/歴史的シンポジウムそして対論/臨床心理学のアポリア
2「個人の病理」と「関係性の病理」
 病理把握の根源的相違/近代性把握の根源的相違
3「語ること」と「語らされること」〜ナラティヴ・セラピーという試み〜
 セラピストの《語り》とクライエントの《語り》/アンチテーゼとしての「ナラティヴ・セラピー」
第四章 近代性と精神分析
精神分析の深淵
 ラカンアルチュセールフロイト解釈/「精神分析私見
フェティシズムと近代性
 フェティシズム形成のメカニズム/近代化というイデオロギー/わが国における近代批判の潮流
終章 アポリア超克は可能か〜パラダイム変換への視座〜
1「臨床心理学」の射程と限界
 職業的倫理について/生活・援助場面の心理主義化知識社会学の示唆
2「エスノメソドロジー」という視点
 現実の社会的構成/「エスノメソドロジー」とは?/セラピー言説の拡張
社会学の刺激的試み
3「共生・共存」へのアプローチ
 「弱さ」との「共生・共存」/当事者性ということ/教育場面における「共生・共存」/結び

 読みたいと思っていたらちょうど書評を依頼されて献本いただきました。資格問題にも関わる臨床心理学のあり方を問う本です。これから読みますが、目次を眺めるだけでお勧めです。献本いただいた雲母書房に謝意を込めてしばらくトップに置かせていただきます。

「臨床心理学」という近代―その両義性とアポリア
487672184X大森 与利子

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「隙間」論 人間理解の臨床―モノローグからダイアローグへ
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青春こころ模様―青年心理の周辺
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