哲学者エディプス/ジャン=ジョセフ・クロード・グー

 よーくソポクレスの「オィディプス」を読んでみたら、フロイトがいっている「父を殺し、母と交わる」願望と、この戯曲を結びつけることの不自然さがわかるはず。
 小此木先生が精神分析辞典のエディプス・コンプレックスの項でも書いていたけれど、少年愛の果てに相手を死に追いやってしまった父親ライオスの罪という点からこの物語を振り返ることもできる(小此木先生の論点にはいつかきちんと反論を書いておきたいな) 。だが、本当にエディプスが戦わなければならなかったのは父親というより、スピンクスに象徴される母親なるものであったという点では著者に賛成。
 イニシエーションを受けない哲学者という視点からエディプスを再描画。
 哲学的ジャーゴンは多いけれど、エッセンスの部分は面白い。哲学アレルギーがなければお勧め。

哲学者エディプス―ヨーロッパ的思考の根源
哲学者エディプス―ヨーロッパ的思考の根源ジャン=ジョセフ・クロード グー Jean‐Joseph Claude Goux 内藤 雅文

法政大学出版局 2005-06
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