夏目漱石が現代の主婦に転生するという宮藤官九郎の衝撃の昼メロ「吾輩は主婦である」も今週で終わりで残念ですが、これは夏目漱石『こころ』を叙述ミステリとして読むとどう読めるかという「読み」のマエストロによる評論。
「先生」から「私」にあてられたたよりは「二通」だけという言及がある一方で、数えてみると「私」は遺書のほかに二通のたよりを受け取っていて「三通」ということになる。これは作者の勘違い?いや、筆者によれば「テクストは間違わない」、一見意味のなさそうな矛盾に意味を与える読みの豊饒。この矛盾を解消するアクロバティックな読みの方法とは・・・そこからあぶりだされる意外な結末は・・・
ナボコフならぜったい意識して罠をかけると思いますが、夏目漱石はどうなのかしら?でも、そんなことおいといて、臨床的観察にも役に立つ視点だと思います。
高校生向けということですが、レベルは落とさず言葉はやさしくという姿勢もよいです。ただし、さすがに「私」と「先生」のやおい説はオミットされてました。榎本ナリコ版「こころ」も気になるな・・・
お薦めです。
『こころ』大人になれなかった先生 | |
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