樹をみつめて/中井久夫

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出版社/著者からの内容紹介
〈私はふと思った。植物界を人間と動物の活動の背景のようにみなしてきた。植物に注目するのは、もっぱら人間のために役立つかどうかという点からである。中米のサトイモは人間のホルモンであるステロイドのまとまった量を作ってくれるとか。石油代わりの液を出す植物に注目して「地球にやさしい」とか。…医学は人体を宇宙の中心に据えた天動説生物学になりがちである。天動説は根強い。医学だけではない。自国からしかものが見えない傾向が強まっているのも天動説復帰であろう。時には植物の側から眺めると見えてくるものがある。そういう眼を持ちたいものである。何の役に立つかという天動説的観点から離れ、役に立たないどころか悪臭を放つ実を降らせるフクギの、いわば存在自体を肯定して、福をもたらすとするのが沖縄の心ばえである。おそらく無用にみえるものの存在を肯定すること自体が福をもたらすのであろう〉(樹をみつめて)
それぞれ100枚を超える長文エッセイ「戦争と平和についての観察」「神谷美恵子さんの「人と読書」をめぐって」の2編を軸に、「甲南裏山物語」「治療における強い関係と弱い関係」「数学嫌いの起源」「最晩年の定家」など、書き下ろしもふくめ22編を収録。著者の現在の視点をつたえる。

内容(「BOOK」データベースより)
100枚を超える長編「戦争と平和についての観察」「神谷美恵子さんの“人と読書”をめぐって」を軸に、書き下ろしを含め22エッセイ。著者の現在の視点を伝える。


目次
樹をみつめて
二〇〇一年秋 神戸
甲南裏山物語
神戸の街角から
戦争と平和についての観察
妄想と夢など
睡眠医学からの助言
認知症的高齢者との対話
治療における強い関係と弱い関係
記憶、脳/精神、音楽療法
神谷美恵子さんの「人と読書」をめぐって
いくつかの出会い
数学嫌いの起源
回想の散歩道
アイデンティティと生き甲斐
戦後社会変動と犯罪
対米要望の権利と義務
奇妙な無風地帯の感覚
こころと体についての断想
翻訳って何?
これらの切れ端を私は廃墟に対抗させた
最晩年の定家―老年は古人に再び出会う季節である

樹をみつめて
樹をみつめて中井 久夫

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