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鍋田先生単著の『変わりゆく思春期の心理と病理』も良かったですが、編集もののこちらも良いです。葛藤モデルから欠損モデルへなどいろいろ言い方はありますが、臨床の世界はまだまだ機能不全モデルから、機能低下モデルへのきりかえがうまくいっていないという印象があります。思春期・青年期の臨床はやはり成長促進的なグループを抜かしては考えられないでしょう。
本書は、思春期という特殊な時期について、また思春期に見られる個々の病理について、最新研究や報告を踏まえて、現在どのような視点から考えられ、どのような治療的アプローチがなされるようになったかを16人の経験豊かな臨床家が論じたものである。
まず、従来から思春期臨床の中心テーマでありつづける境界性パーソナリティ障害・摂食障害をはじめ、わが国の思春期に特徴的な不登校・ひきこもり、そして社会不安障害(social anxiety disorder:SAD)の視点から捉え直されつつある対人恐怖症などの現在的な問題を取り上げる。
つづいて、近年注目を集めている思春期のうつ病、発達障害、身体醜形恐怖、解離性障害などの新たな問題に触れ、最終部ではますます深刻化する自傷、自殺、性的非行など、行動化の問題にも考察を加えた。
それらの疾患に対する、認知行動療法、心理教育などの近年登場した新たな治療的アプローチを、豊富な臨床例を通して解説している。
目次
思春期という時代・思春期危機の意味
第1部 思春期の病理への新たなる視点と展開(思春期臨床と精神療法的アプローチの新たなる展開;アタッチメントと思春期臨床 ほか)
第2部 思春期の主要な病理に対する新たなるアプローチ(不登校・ひきこもりの現状と対応―side-by -side stance・群れ体験的アプローチ;思春期の境界性パーソナリティ障害―外来・入院を含む総合的アプローチ ほか)
第3部 最近問題化している思春期の病理(解離性同一性障害へのアプローチ;容姿の美醜に関する臨床の現在―身体醜形障害(醜形恐怖症)を中心に ほか)
第4部 古くて新しい思春期の重大な問題―行動化(思春期の自殺の現状と対策;自傷行為の理解と対応 ほか)
執筆ラインナップもつぶがそろっていて、小羽先生のラングス流のコミュニカティブ・アプローチ、伊藤絵美先生の認知行動療法、一丸藤太郎先生の解離性障害、傳田健三先生の思春期のうつ病、高橋祥友先生の自殺問題、鍋田先生の醜貌恐怖(SSRIが10%には有効とのこと)、松本先生の自傷行為への対応法など、興味深い論文が多かったです。
思春期臨床の考え方・すすめ方―新たなる視点・新たなるアプローチ | |
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