ナチスのユダヤ人迫害が始まって、ヨーロッパからユダヤ人のエクソダスが始まり、彼らはイギリス、アメリカ、南米などへと亡命し、それとともに精神分析の中心も新しい場所へと移行してきます。それ以前の精神分析の中心といえば、まずはフロイトのウィーン、アブラハムのベルリン、そしてフェレンツィのいるハンガリー、ブダペシュト。フロイトから訓練分析を受け、メラニー・クライン、アーネスト・ジョーンズらに訓練分析を行い、何より患者へのキス事件でフロイトから再三戒められ、死後にジョーンズの書いた伝記には「発狂した」とまで書かれたフェレンツィの重要な論文が死後70年以上を経てようやく翻訳されました。
ぼくもアマゾンがまだ存在しない頃、英語の3巻の著作集を海外に注文して青色単色の素っ気ないやつをぽつりぽつりと読みました。
今回の著作集は後期論文をまとめたもので、全訳ではありません。まあ重要なのはだいたいはいってますけど、初期の重要論文「現実感の発達の諸段階」とかはいってないのはやっぱり残念。
マスターベーションへの必要以上の罪悪感など時代を感じさせるところもありますが、今読んでも新しさがあります。バリントの解説が巻末についてますが、バリントの有名なとんぼ返りをした事例の原点はここにあったかと思います。
積極技法、リラクゼーション療法、対象関係論、外傷論、短期療法(中断療法)、児童分析の成人への分析の応用、さまざまなアイディアがここにつまってます。やっぱりフェレンツィ、天才でしたね。
精神分析への最後の貢献―フェレンツィ後期著作集 | |
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