シャルコー/江口重幸
フロイトにも大きな影響を与えたサルペトリエール学派のフランス人精神科医シャルコーについての総説。
この本を読んで始めて知ったけど、シャルコーの講義の翻訳が、明治時代の1906年〜1911年にかけて「沙禄可博士神経病臨床講義」として出版されている。呉秀三とともに日本精神神経学会の前身である日本神経学会を設立した精神科医の三浦謹之助は1892年、パリで半年間シャルコーに学んでいる。三浦は明治天皇崩御の際の医療チームに加わり、大正天皇を診察、昭和天皇の欧州旅行にも随伴。福沢諭吉の晩年の主治医となり、その他にも伊藤博文、井上馨、桂太郎、松方正義、原敬、加藤高明など多くの政治家、著名人の主治医となった。
また森鴎外の小説『魔睡』に揶揄的にモデルとしてとりあげられちょっとしたスキャンダルとなった。
上記のスフィンクスの前の侍の写真は池田欧使節団のもので、見たことのある人も多いと思うが、この中には三浦の義父で初代東京帝国大学医学部長であった三宅秀(ひいず)も含まれている。東京帝大の精神医学講座の初代教授は榊淑、二代目が呉秀三、三代目の三宅鑛一(松沢病院院長を兼任、精神障害者の優性断種を推進した民族衛生学会に参加。ただし三宅自身は断種に関しては慎重論。)は秀の息子、そして四代目が三浦である。
シャルコー―力動精神医学と神経病学の歴史を遡る (精神科医からのメッセージ) | |
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