幻想の十蘭的ゆるゆる従軍日記

久生十蘭「従軍日記」/ 久生十蘭

 戦争中っていうとドラマの中でしか知らない世代なんですが、作家久生十蘭の従軍日記なのですが、壮行会の料亭写真も何だかこざっぱりしているし、ジャワ島での十蘭の生活は娼婦買いやら、20歳は年下の妻への土産買い、アメリカ映画を見たり、ピアノを見たり、何だかヴォルマンの小説を思わせるゆるゆるぶり。悲惨な戦争という切り口以外にもこんなところもあったのだなという感じ。思いがけず森田たまとの邂逅の記載を見つけたのは嬉しかった。
 まあ回を追うごとにだんだん従軍記っぽくはなってきて、個人的には奥泉光の従軍ものが苦手な感じに近くなってつまらなくなってはきたのですが。
 久生十蘭ファンには少ない作家のパーソナルな側面が伺えて良いかも。

久生十蘭「従軍日記」
久生十蘭「従軍日記」久生 十蘭

講談社 2007-10
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