「桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活/奥泉光」

 奥泉光のミステリというと最後は地と図の境界さえ消え失せて、あれ犯人は誰だったの?という感じのメタミステリが印象的で、そういう中でも『葦と百合』といった傑作もいろいろ残していますが、そんな奥泉氏の『モダールな現象』は、あまりにミステリ的な解決が待っていてちょっとびっくりした覚えがあります。前作では狂言回し的な役割だった桑潟幸一先生が所属も短大から千葉県のたらちね国際大学に転任になって、大活躍というか情けなさ10倍増というか。
 カバーを見てもわかるとおり、文体以外はラノベ化している感じなので、ラノベのヘタレ男子主人子としても十分主役級、しかも女子大生に囲まれて、というか尻に敷かれてクワコー氏もどこか楽しそう。カバーでもクワコー氏もこれだけ美男に描かれたら本望でしょう。犀川助教授をマンガに登場させるときにかっこよくかかないでほしいといった森博嗣のコメントが思い出されます。ホームレス女子大生にして、名探偵のジンジン、コスプレ文学部など役者はそろっている感じです。短篇三作の連作もの。まだ続きがでそうです。

桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活
桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活奥泉 光

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