「ユングの世界―こころの分析とその生涯/E.A.ベンネット」

 ユング賛美本。エドワード・グラバーの次の文章は興味深いね。


 「正統フロイト派はクライン理論を神秘的逸脱としてすでに難詰した」
 ようするにクライン理論が出てきたときに、正統フロイト派の分析家はこれをユング的逸脱だと思ったのだね。ロマン主義的なこころの中の人格みたいなものは否定されなければならなかった。だからフロイトは乖離ヒステリーの症例なんかをみていても、結局「自我の分裂」という機能の側面しか語れなかった。精神分析における「私」の問題に向き合ったのはもちろんコフートなんだけど、正統派分析家は当時やっぱりユングを連想したのかな。


ユングの世界―こころの分析とその生涯
E.A. ベンネット E.A. Bennet

ユングの世界―こころの分析とその生涯

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