「日本の作家が語る ボルヘスとわたし/野谷文昭 編」

 ボルヘス会の10年にわたる講演をまとめたもの。ボルヘスについて何か語るとしたら、やはり奇妙な経緯で手に入れたボルヘスの未発表原稿がいかに自分の手から永遠に失われたかとか、そういう経緯を語り、そもそも語り手と思われる作家が実在するのかを読み手に疑わせなければいけないと思うけれど、そういう視点から語った作家はいなかった。当たり前か。
 しかし、ラブレーとか宮澤賢治ボルヘスを対置させるようなやり方は何かが違うと思う。そうでなく、ボルヘスの公表されていない引用の中にあるようにラブレーを引用すべきだろう。そういう意味ではやっぱり葛原勾当ボルヘスの姿を二重写しにしてみせた辻原登はやっぱり他の書き手とは違った。

日本の作家が語る ボルヘスとわたし
日本の作家が語る ボルヘスとわたし野谷 文昭

岩波書店 2011-09-28
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