ハリー・スタック・サリヴァン 中井久夫訳「精神医学的面接」の翻訳がひどい件

 改めて原文参照してみたら誤訳だらけで愕然とした。読んで明らかにおかしい日本語の部分だけを軽くチェックしただけなので、詳しく見ればもっとたくさん発見できると思う。


p.1 (訳)「精神医学という分野は対人関係の学である」という定義がくだされ、「精神医学とは科学的方法を適用する根拠を有する領域である」とみなさるようになって以来のことであるが、
→ (試訳)  「精神医学という分野は対人関係の学である」と定義されてきたし、「精神医学とは科学的方法を適用する根拠を有する領域である」とみなされてきたので、
 冒頭の文章から接続詞 since の後が現在完了だから「~なので」と「理由」として訳さなければいけないところが、「以来」と訳されている。


p.42 (訳)「私はわかっていないことを即座に言わんとしているのではないが、私の受け取ったままで相手の言わんとしていることがわかってよいのか」 → 「これがただたちに自分の心に浮かばなかったことを意味しているということがありうるのだろうか?そう考えると彼がいいたいことを理解できるのだろうか?」
 訳文全く意味不明。


p.42 (訳)「夜遅く牛乳配達車が牛乳缶を一個落としていったので目が覚めたのです。」 → (試訳)「今朝、牛乳配達の人が容器を落とした音で目が覚めたんです」 
 ミルクの缶を配達してたわけではなく、大きな容器に入れて運んでいるのです。缶入り牛乳一個の音で目が醒めたらどう考えても普通ではありません。last night が「夜遅く」というのは中学生レベルの誤り。


精神医学的面接
精神医学的面接サリヴァン,H. S. 中井 久夫

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