子ども相談・資源活用のワザ―児童福祉と家族支援のための心理臨床/衣斐哲臣
精神病院に勤めていて有益な体験は何だったかというと、まあ迷うところではありますが、有料の開業心理療法など決して訪れない人々に関わったこと、特に自発的な治療意欲を持たない(ように見える)人々とどう関係をつけていくかを鍛えられたことがあると思います。
この本も何となく社会資源の確保、活用法の本かと思ってましたが、違いました。児童相談所を中心にした虐待、不登校などに戦略的な家族療法、短期療法的なアプローチでの関わりを示しています。動作法などもとりいれながら、柔軟に時には強行に治療関係を強化していくのは見事なものです。
著者が精神病院に十数年勤務の後、児童相談所に転じたという経歴を読んでなるほどと思いました。お勧めです。
つまんない突っ込みをひとつだけいれておくと相撲の真剣勝負を表す隠語の「ガチンコ」と映画の撮影開始の合図のための小道具「カチンコ」は別物です。念のため。