「ペルセポリスI イランの少女マルジ ペルセポリスII マルジ、故郷に帰る/マルジャン・サトラピ」

 アケメネス朝、ササン朝とかつては大帝国を誇ったペルシアもその後は長い隷属の歴史を辿る。ペルセポリスというのはそのアケメネス朝の首都。しかも、「ペルセポリス」というギリシア語による名前が広まったのペルセポリスが廃都になってから。そもそもダリウス大帝など、ギリシアの歴史を通じてしか語られないため、みんなギリシア風の名前で今日まで呼ばれ続ける国。ちなみにアケメネスもペルシア語ではハーカメネシュ、ダリウス大帝はダーラヤウシュみたいな感じ。
 イランというとイスラム教というイメージだけれど、考えたらペルシア人にとっては征服者アラブ人の宗教なんだよね。スンナ派と対立するシーア派が国教になっているのもそんな背景も影響しているんだろうね。
 だけど世界的な左翼運動の流れが大きくなるところまではイランも同じ。そして国王が海外逃亡した後に宗教革命へと転じていく。著者は国王の前にペルシアを治めた皇帝の孫で裕福な家庭に生まれた女性。小さい頃は預言者マルキシズムに憧れ、ヘジャフも被らずパンクに憧れる比較的自由な生活だった。ところが左翼運動の盛り上がりの後には宗教的な制約が大きくなり、イランイラク戦争も始まって著者はウィーンの学校へ。自国は戦争なのに、自由なヨーロッパではマリファナとパンクの世界。男女席を同じうせずというか、そうしていると逮捕されるような国と、フリーな西欧での凄まじいギャップ。その中で翻弄されながら成長していく著者の姿がリアルに描き出されている。お勧めです。

ペルセポリスI イランの少女マルジペルセポリスI イランの少女マルジ
マルジャン・サトラピ 園田 恵子

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