攻撃と殺人の精神分析/片田珠美

 連続殺人者の病跡学。著者はラカン派分析家ということなんだけど、実際に行っている解釈は古典的なフロイト解釈で、その内容も首をかしげたくなります。例えば


 ごく幼い年頃の子どもが性的な交渉を目撃すると、それを一種の虐待や征服として、サディズム的な意味に解することがある。幼児期にこのような印象を受けた場合には、成長してから性目標がサディズム的な方向に倒錯する傾向の強まることが、精神分析によって明らかになっている。p.12
 フロイトの原光景理論をそのまま大久保清にあてはめて著者はこういっていますが、これって方向が逆ですよね。サディズム的な倒錯をもった人の分析をしていると、その幼児期の記憶に原光景と思われるものがある。遡及的な過去想起と、因果関係を混同するのは問題ですし、精神分析が提出しているのは仮説に過ぎません。それにこの仮説が正しいとすると、個室などの環境がない生活をしている民族や、原始人などのサディズム的倒錯度も高まることになりますが・・・
 とりあげた殺人者は大久保清宮崎勤、ギ・ジョルジュ Guy George (著者の「ギュイ」という表記は間違いです)
 後書きにこの著作を書くきっかけとなったのが精神科医ラカン派の分析家である(あった?)小笠原晋也の婚約者殺害事件であったと記載していますが、なぜか著作では匿名かつ、公判中であるとの理由でたちいったコメントはなし。おなじく公判中である宮崎勤は実名で分析を加えているのに・・・。
http://programmes.france2.fr/faites-entrer-laccuse/13171837-fr.php#para13486344
 参考文献は校正をし忘れたみたいです。

  • p.299 HomiddaI → Homicidal
  • p.300 Foresnic → Forensic
  • p.300 The Insanity of the Hero-an Intrinsic Detail of the Orestes Vendetta. → The Insanity of the Hero - An Intrinsic  このまま読むと Hero-an ってどういう単語だと思ってしまいます。

攻撃と殺人の精神分析
4901510312片田 珠美

トランスビュー 2005-06-21
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