100頁ちょっとで注もない薄い本。ラカンの鏡像になって自我心理学を攻撃し、「真の」精神分析の復権を訴えているているのはいつもの微笑ましい展開だけれど、ラカンの「現実的なもの」「想像的なもの」「象徴的なもの」という三部構造を棄却して、「自己」という概念(ただしユングやコフートのいう自己とはまったく関係ないらしい)を導入するなど意欲的な試み。ただいかんせん論理的枠組みを提示しただけで、この理論構成が実際の臨床でどのように生かされるかは不明瞭。
出版社/著者からの内容紹介
今日の精神分析の危機とは,なにを意味するのか.精神分析の停滞の原因はどこにあるのか.「思考の経験としての精神分析」という視座から,精神分析を再開するための新たな理論的根拠を提示し,相互に深く絡みあっている臨床的な場と認識論的な場において,フロイト以降の精神分析経験のラディカルな更新を試みる.
内容(「MARC」データベースより)
今日の精神分析の危機とは何か。「思考の経験としての精神分析」という視座から、精神分析を再開するための新たな理論的根拠を提示し、臨床的な場と認識論的な場においてフロイト以降の精神分析経験の更新を試みる。
クライン・ビオンとラカン理論の相互補完、スターン、オグデンへの評価など結構ふところは広い。フィヒテが用いた転移に先立つ「転移」の概念など、哲学関連は強いという印象を受けた。
基本文献案内のところは読書欲をそそられる。
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