精神分析のクライン派とラカン派を代表する分析家たちが同じテーマを巡って、講義＋ディスカッションを戦わせています。あんまり接点がないようにも感じますが、ラカンは結構クラインを引用しています。無意識＝エスを強調するところは共通点がありますかね。ただビオンとラカンの方が議論としてはおもしろそうですね。残念ながら議論はいまいちかみ合っていません・・・。
内容（「MARC」データベースより）
クライン派の分析家とラカン派の分析家とのあいだで行われた、一連のディスカッションの内容をまとめた講義集。フロイトの主要テーマを巡って真剣な対話を交わし、精神分析の独自性を語りつくす。目次
■児童分析
１ クライン派の児童精神療法
２ ラカン理論における幼児
３ 児童分析についての討論
■解釈と技法
１ クライン派の技法と解釈
２ 解釈
３ 解釈についての討論
■幻想
１ 幻想と精神病的不安
２ クラインとラカンにおける幻想
■セクシュアリティー
１ セクシュアリティーについてのクラインの見解――特に女性のセクシュアリティーについて
２ 性の喜劇を理論化する――ラカンのセクシュアリティー論
３ セクシュアリティーについての討論
■逆転移
１ クライン理論の転移と逆転移
２ 逆転移についてのラカン派の見解
■無意識
１ 無意識――クライン派の観点
２ ラカンの見地による無意識
３ 無意識についての討論
■今日のクラインとラカン
１ メルツァーへのインタビュー
２ クライン派解釈再考――どのような違いがあるのか
ラカン派の分析家は「ラカンの仕事」のビチェ・ベンヴェヌートくらいしか聞いたことがありませんでした。クライン派は「クリニカル・クライン」のヒンシェルウッド、ロビン・アンダーソンが講義を行い、ドナルド・メルツァーへのインタビューも掲載されています。
ヒンシェルウッドが集団療法に関する本を出しているらしいですね。読んでみたいです。クライン派の集団療法というとビオンばかりが有名ですが、ロゼンフェルトなど結構グループをやっている人はいますね。
また編者のラカン派分析家のバゴーインは「象徴方程式」のオリジナリティをシーガルやクラインじゃなくて、正しくフェレンツィに帰しています。
新訳のフロイト全集刊行を前に、ワーク・スルー(Durcharbeiten 旧訳では「徹底操作」)が「反芻処理」と訳されていますね。「反芻」は牛みたいで、個人的にはぴんと来ません。
- p.7 観察ノート → やっぱり「デス・ノート」がよくない？観察記録 note を「ノート」と訳すのはミスリーディングだと思う。日本人はまず「帳面」を思い浮かべるに違いないから。
- p.98 ジョアン・リヴィエール → ジョーン・リヴィエール いつもの間違い、というか正しく表記されているのを見た記憶がない・・・。やっぱり「グラバー」も「グローバー」と表記されている。
- p.324 邦訳文献 「メラニークライン・トゥデー」とかアイザックスの「空想の性質と機能」が載っている「対象関係論の基礎」など邦訳されているものがリストから多数抜けている。
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