学校臨床ヒント集 スクール・プロブレム・バスター・マニュアル/若島孔文 編著

 家族療法、短期療法などの考えをもとにした、スクールカウンセリング運営に関するヒント集です。
 ちょっと気になったのは第11章。統合失調症が疑われる高校生をいかに医療機関につなげるかという事例が載っているのですが、親に受診をしられたくないと学生が主張するので、スクールカウンセラーが実際は学校と打ち合わせているのに、学校の反対を押し切って無理に親をよんだということにして、親にはスクールカウンセラードーパミン異常の可能性を指摘し受診を勧め、親を呼んだことは本人に内緒にしておいて、親は歯医者の受診に必要だということでさりげなく保険証を出しておく・・・
 昔の精神医療(今もそうかもしれないけど)では、本人には内緒で家族に食事に薬を混ぜさせるなんてことが結構ありました。まあ、それはそれなりの事情があって、そういう手段を取ることで結果オーライとなったケースもあると思います。
 この事例でもスクール・カウンセラーという不安定な立場でできることは限られていますから、やむをえないところは有るのかもしれません。
 でも少なくとも事例として提示する場合は、その「操作」的な介入に対する批判的な視点を設けておかないと、本人が知らないところでいくら操作してもOKということになってしまわないかということが心配です。
 自分ならある程度期間を区切って、それで本人の症状が改善しない場合は、本人に伝えた上、自分から両親にコンタクトを取るという選択をするかなと思いました。

学校臨床ヒント集―スクール・プロブレム・バスター・マニュアル
学校臨床ヒント集―スクール・プロブレム・バスター・マニュアル若島 孔文

金剛出版 2003-01
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