「元過激派・トロツキスト」の精神科医による搾取されるマイノリティとしての「在日」への着目。作者は執筆時点で末期癌の状況にあり、どこか異様な迫力があります。北朝鮮を「朝鮮民主主義人民共和国」と書かざるをえない思想的背景を断罪するのは容易ですが、少なくとも共産主義運動は弱者への着目という視点はありました。それがわずか半世紀で研究万歳・科学主義万歳に反転した精神医療の流れは多くのものを得た一方で、なくしたものも多かったような気がします。
雑誌「精神医療」の母胎が東大精神科医師連合の機関誌ということは知りませんでした。それで薬の広告が一切ないのですね。かつては「この雑誌に関わりを持つこと自体、大学での出世の道をたたれることを意味した」(p.159)そうです。わはは、そういう雑誌に執筆できたとは光栄です。思わずマルクス主義への悪口も書いてしまいましたが、知らないとは恐ろしいこと。でも、知っていても書きますけどね。
<追記>黒川氏は2008年逝去とのことです。
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